※編注:『OGIMURA ACTIVITY REPORT』は荻村伊智朗が国際卓球連盟会長時代(1987年~1994年)に自身の支援者たちに送った活動報告
【国際卓球連盟会長報告】(6月)
私が会長に選出されてから3か月が過ぎました。私の現在までの活動の要点報告をいたします。
私の大体の計画では最初の一年を意見の収集、発展計画のリストづくりと、それに対する優先順位の割り当てに費やす予定。これは、翌年開催される理事会で新しいプロジェクトが議決されることを目的とし、初めの一年は理事会が承認するような発展計画の完成に専心することを考えています。
最初の一年、これは来年3月のリヤドでの理事会までのことですが、私は80以上の協会の訪問を試みるつもりであるということを選出以前に私はコミットしています。
私は選出される前に既に約70の協会及び地域を訪問していて、既に多くの協会の状況を知っていたと信じています。しかしながら、執行委員会は3月30日のロンドンでの会議で、私がより広範囲の訪問をすべきであることを承認しました。会計はそれに伴う出費はまだ我々の予算内であると見積もりました。なぜならば、私はファーストクラスでの移動をせず、また会長手当も受け取らないからです。
執行委員会は、各国協会、大陸連盟、地域連盟、その他の団体の意見忠告を、ITTFが色々な計画の優先順位を割り当てたり、計画の遂行を開始するまえに収集することが重要であるという私の見解に同意しました。
私は会談で学んだ全ての詳細な記録を作っています。やがて、私自身でチェックし、相手側の承認も取ったあと、それらを配布する用意をします。
ところで、私は事務局長と綿密な連絡を取っており、ファックス(30秒でA4文書1枚を送言)、テレックス、電話を使用することによって迅速かつ効果的な通信システムを整えました。この通信にかかる東京でのコストは、ITTFの財務上の重荷を軽減するために、私自身とJTTAによって支えられています。
11月末のソウルでのMC(マネージメント・コミティ、会長・副会長会議)までに私はおそらくほとんどの大陸の約50の協会を訪問しています。またそれまでに、新しく定められた「発展」、「ライセンシング」、「会費再考」の研究班との意見交換を通信によって行ない、その結果、それぞれの委員長は最初の報告を運営委員会にむけて作成できるでしょう。
1988年2月末までに私は60~80の訪問可能な協会を訪れたいと思っています。そして、理事会と運営委員会に総括的な報告をし、発展計画を提案するつもりです。
それから、理事会の決定がおりれば、我々は’1989BGMまでの間に承認された計画・活助を遂行できるでしょう。私と執行役員会の同僚は、次の一年間はそれ以上の訪問よりもこの発展プランの遂行により力を注ぐでしょう。
私のこの3か月の訪問と会合を説明します。
(a)各国協会
第1回訪問 3/26~4/4 香港、中国、イングランド、ポルトガル、フランス、デンマーク、スウェーデン、フィンランド(8)
第2回訪問 4/23~5/5 スイス、オーストリア、イタリア、ユーゴ、ギリシャ、インド、タイ、インドネシア、シンガポール、マレーシア(10)
第3回訪問 5/14 韓国(1)
第4回訪問 5/28~6/7 アイルランド、ベルギー、オランダ(3)
(2)訪問中のその他の独立した会合
第1回 ITTF執行委員会、IMG、ITTF マガジン編集者、ITTFアジア副会長(4)
第2回 ASOIF(夏期オリンピック国際連盟協会)、ASOIFとIOC執行委員会、IOC会長、スウェースリングクラブ会長・副会長、ITTFヨーロッパ副会長とETTU会長、ライセンシング研究班班長、ユーゴ・オリンピック委員会(7)
第3回 ソウルオリンピック組織委員会(1)
第4回 UNESCO、会長代理、スウェーデン、ITTFランキング委員長、IOC会長(5)
3/6 からの会合総数(39)
(c)これからの訪問計画
第5回訪問 6/14~17 朝鮮民主主義人民共和国、ATTU事務局
第6回訪問 6/21~7/4 ITTF執行委員会、ITTFマガジン編集者、IOC会長、チュニジア、エジプト、ヨルダン、クウェート、パキスタン、ネパール、ビルマ、タイ
第7回訪問 7/30~8/24 第8回ワールドカップ、ケニア(全アフリカ競技会)、インディアナポリス(パンアメリカン競技大会)、アメリカ、南米数協会
私は全ての協会から暖かい、親身な接待を受けたことを喜んで書き留めておきます。訪問時間のほとんどは関係当局の訪間と協会との真剣な会議に費やされました。(会談の平均時間は約5時間。いくつかの会談は12時間に及んだ。)
また、私は我々の競技を発展させようという皆さんの熱情を十分感じました。私は今後の訪問も同様の手法で続行したい。多くの会合をもちパーティーはほとんど行なわない、管轄当局の訪問をし、しかし観光を行なわない。また、現地で卓球と報道の関係促進ができるように、いろいろなメディアとの会談の機会も忘れないようにすることを希望します。
※私は各協会との会合のために予備議題を前もって用意しました。その主な項目とは…
「貴協会より世界チャンビオンを出すためにITTFはどのような手助けができるか」(才能のあるプレーヤーの発掘、下部組織の指導、インセンティブ、社会的な後援体制)。また、「貴地域の卓球の人気を倍増させ、卓球人口を倍にするためにITTFは貴協会をどのように手助けできるか」(効果的な刺激、組織の問題、教育の問題、資金の調達)。
※私の各国訪問中にさらに多くの話題が持ち上がったのでそれらのいくつかを記録しておきます。
ITTFプロモーションチーム・ITTFスーパースターサーキット・ITTFビデオライブラリー・ITTF奨学トーナメント・世界選手の改善・ITTFマガジンの改善・ワールドカップの改善・ワールドグランプリの改善・ITTFコーチセミナー・国際審判員試験・ITTF協会運営セミナー・「卓球の伝説」の出版・「卓球の歴史」の発行・「卓球百科事典」「卓球指導料学・技術の総覧」・ベテラン会との関係・ITTF表彰システム・ITTFプレティン・将来のルール改正・世界ランキングの制度・1988年オリンピック・オリンピックでの団体戦の新設・将来のオリンピックでの参加人数の増加・オリンピック参加資格・ワールドジュニアイベント・名誉の殿堂、ITTF奨学大学トレーニング・ITTFカデットジュニア合宿・Cuckoo Nest リーグ奨励策・AIPSとの関係改善・現在の収入の見直し・支出の見直し、ユネスコの奨学支援案及びアフリカでの簡易設備によるスポーツ発展計画・IOCソリダリティコース、申込みと実行の便覧・IOC資金の良い使い方・エバンス夫妻の1988年オリンピックへの招待・新収入源・世界選手権の手引き改訂版・世界選手権団体戦組み合わせの改善・ITTF コーチバンク・製造業者とのパネル・オリンピックテレビ収入のITTF内部の割り当て方法・コンクリートの卓球台と屋外卓球・小学校課程への卓球の導入・チームデンマーク・コンピュータランキング・各協会事務局でのコンピュータの用途・マスメディアとの接触システム・「卓球高校」のシステム・テレビの関心を引く方法・スウェースリングカップ方式(長すぎる?)・マーセルコービロン方式の変更時期?・1987年6月ランキング・高年者の卓球、その用具及びルール・ITTFと大陸連盟の協力と競争。
※その会談中に出てきた問題のいくつかをここの書き留めます。
○先進協会からの協力の約束
中国、ユーゴ、スウェーデンのような強い協会が、世界の選手の水準の向上について、ITTFに協力するために最善を尽くすと決心したことをきいて大変元気づけられました。しかし徐寅生氏は、ドルトムントでは中国はチャンスが少ないだろう、というのは、中国と他のトップチームとの差がとても小さくなっていると気付いたからです、と冗談を言いました。3つの協会とも、プロモーションチーム・スーパースターサーキット・ITTFコーチバンク制度・ITTF奨学支援計画が実行できることになれは喜んで参加するでしょう。
フィンランド、スウェーデン、フランス、イングランド、デンマーク他は、ITTF協会セミナーの概念が発展したときは、講義のための課目について研究したいと話しました。デンマークは報道情報システムを含む5課目について講義を行なう用意をしています。
イングランド協会長ジョン・プリーン氏は、ITTF・大陸連盟・各協会から奨学支援を与えられるプレーヤーに対して、専門的な卓球の訓練ができる施設を供給してくれることに興味を示しそうなイギリスの大学について研究してみることに同意いました。
○これからのITTFの活動に参加する激しい興味
ポルトガル、デンマーク、オーストリア、ギリシャ、タイ、インドネシア、フランス他多数は、ITTFセミナーのホスト役に無味を示しました。また、コーチセミナー・協会運営のためのセミナーを開催することをITTFが決定するならば、これらの協会はとても低いコストでそれらをホストすることができるでしょう。
香港、ポルトガル、デンマーク、シンガポール、アイルランド、フィンランド、インドネシア多くの協会は若い選手と彼らの両親にアピールできるようなある種の奨学制度に加わることに興味を示しました。
香港、デンマーク、ポルトガル、イングランドほか多数は、ワールドカップやスーパースターサーキットのようなITTF主催行事の主管に興味を示しました。しかし、それらの財務負担はとても大きいことを先ず申し上げておかねばなりますまい。フランスはワールドグランプリのやり方は改善されるべきであるという意見を強く持っています。
私は次の事実に強く印象づけられました。ほとんど全ての協会が、近いうちに彼らの地域から世界チャンピオンを養成する見込が十分あるという信念を心に抱いています。中国・スウェーデン・ユーゴのような協会は、彼らの現在のシステムは大変うまくいっていると確言しています。
これに対し、フランス、イングランド、オーストリア、ベルギー、インドネシアは発展のため最近になって始めたばかりのシステムが良い結果を示し始めていると信じています。
香港、ポルトガル、デンマーク、スイス、シンガポール、フィンランド、アイルランド、インド、マレーシア、ギリシャ、オランダなど多くの協会は、100%国内で世界チャンピオンを養成できるとは確言できないでいるが、ITTFや強い協会の助けがあれば、現在スウェーデンのナショナルリーグでプレーしているブラジルのカノウや韓国の劉南奎のようなトッププレーヤーを養成できると信じています。
○世界選手権
全協会が現在のシステムの改善のために貴重な意見を述べました。
○卓球選手人口の増加
全協会は卓球人口は増加していると感じています。フランスは現在11万人の登録プレーヤーの人数を倍にできています。また、香港、ギリシャ、フィンランドは目標理達のために学校相織の強化を始めることに熱中しています。タイ・マレーシアは大衆スポーツとしての卓球発展のための費用のかからない特別の材料の研究を始めました。
※特別な種類のビデオテープの大きな需要
チャンピオンについての「テキスト」:江加良、ワルドナー他(60分)、プロモーションビテオ:卓球の魅力のすべて(15~30分)、初心者指導ビデオ:基本ストロークといろいろなグリップ(30~60分)、ITTF世界イベント公式記録、~よりのベストプレー、など。
以上の報告が、私の訪問がいろいろな点で価値があることを証明していることを希望し、翌年の公式な計画の役に立つことをすでにたくさん学んだことを現わしていると希望しています。私は、執行委員会、運営委員会、理事会への正式な報告に加えて、今後のITTFプレティンで報告をしていくつもりです。
SEPTEMBER 1987
会長 荻村伊智朗