青卓会 会報No.1「新らしい酒」1968年1月11日 荻村伊智朗

新らしい酒

新らしい酒は、「新しい皮袋に盛れ」といいます。青卓会の歴史も10年を過ぎる1967年になって、にわかに会員の間に会の発展に対する熱意が盛り上ってきました。その機運を引き継いだ1968年初頭2度にわたる会合は、会則の改正、新役員の選出、新事業の立案など、まことに実り多いものがありました

ちょうど卓球の国民的人気と関心が落ち目になっているときに、このような熱意が盛り上ってきたことは、意義のあることです。

大げさな表現ではありませんが、これから発展していこうとする青卓会の活動は、日本の卓球に再び陽を上らせる起動力の役割を果たすかもしれないのです。

ふりかえってみれば、戦後二十年、日本のスポーツ界も変り、国民の中心のスポーツ活動のあり方や、スポーツをする人たちの組織、スポーツの普及発展の方法などは、国民の日常生活の変り方や経済水準の向上、世界的な交流の活発化などの内的外的な要因によって大きく変ってきたのです。

スポーツのクラブや組織の最も大切な問題は、現在と将来の問題です。過去に何をやったかは、大切に記憶され保存されなければなりませんが、それだけが主な話題になり仕事になるような人の集まりは、よどんだ雰囲気のものになってしまいます。

青卓会のここ数年は、そうした傾向が全くなかったとは言い切れなかったと思います。しかし、ここで新しい時代に即応して伸びてゆくための新しい意欲と創意が、会員の中に盛り上ってきたのです。

新しい酒、まさにそれは時代の要求に応え、現代人の好みにぴったりくる芳醇の香りとコクをもった新しい意欲の酒であって欲しいと希います。そしてそれを盛る新しい皮袋も用意されようとしています。問題はこれからです。それが全て新しいものばかりであれば縫い目にムラがあったり、充分にうまみのあるものにまで味が至っていないかもしれません。

幸いに青卓会の会員は、過去に卓球の選手として日本でも数少ない経験を持っている人がたくさんおります。各大学卓球部の主将をつとめられた人も多くいますし、現にコーチとして活躍している人もいます。又社会人としても多種多様な職種にわたり、各業界においても、存分の活躍をしておられる方々ばかりです。

これらの全会員のすぐれた実際的な経験が新しいものの中にもきっと生かされるだろうと私は信じています。

スポーツの発展には強化と普及とを切り離して考えることはできません。強化といえば世界的な選手を生むことでしょう。普及といえば底辺拡大です。日本の卓球人口は480万人といわれておりますが、これをどうやったら本当の競技人口に結びつけることができるでしょうか。

家庭での理解を増すためには、保健体育的な面からアプローチも必要ですし、家族団だん的な面からのアプローチも必要です。社会的な理解を増すには、卓球によって有機的に結びつく機会を職場を同じくする人や異にする人達の間に与えることも必要です。

青卓会19680111

関連記事一覧

  1. 青卓会ナンバー3

Translation

最近の記事

  1. 長野五輪承招致報告書1
  2. 東京新聞1991年4月24日
  3. 日本の千人第2号1
  4. 日本の千人第3号3
  5. 日本の千人第3号1

カテゴリー

PAGE TOP