中国出場を祝す
1965年以来、6年振りに中国が世界選手権大会に出場することになりました。男女8名ずつの選手がエントリー(申込み)されていますが、中国がいない間に参加規定が変り、6~7名しかでられそうもないということです。こうしたエピソードも、6年という歳月があったことを思わせます。
文化大革命という激動期をのりきり、難しい日中関係の荒波をのりこえて名古屋大会に参加しようという中国チームの意気ごみを私達は壮としなければならないと思います。
たしかに主力は高年令者であり、体調も決してよくはありません。恐らく全盛時代の70~80%ぐらいの強さしかないでしょう。
しかし、ただ単に老いたのではありません。いってみれば帰り新参、形をかえた初出場、とみることもできます。そうした気迫をもっていれば、相当の活躍を期待できそうです。
私は、練習不足にもかかわらず参加に踏みきったその友好精神に敬意を表します。
伝えられる代表団は60名、その中には北京体育学院の学長の名前もあります。中国がこの大会の後にどれだけの力を卓球に注ぐかの予告、と私は感じました。
日中対抗の復活
復活する日中対抗は多くの日本の若者によい刺激を与えてくれることでしよう。世界選手権参加の蔭にかくれていますが、これも日本の卓球界にとってはビッグニュースです。
長谷川喜代太郎前理事長時代には、日中対抗の他に北京国際招待大会にも参加をし、大いに日中友好の実をあげ、同時に山中、深津、森沢、長谷川、鍵本、田阪らの新鋭がこれらの行事を通じて育っていったことも私達の記憶に新しいことです。
71年夏には、高校選抜チームの中国遠征もあるそうです。それより先に世界選手権直後におこなわれる日中対抗には、私が広州で指導したことのある王文華選手のような若手の来日もあります。
ここ数年間、低調をきわめた日本の卓球界もライバルの復活で心機一転、前進のキッカケをつかめることでしよう。
1954年以来、世界の主役は常に20才前後の選手でした。普段あまり練習しない高年令者が大会前の間に合せ的な練習で優勝するような時代は早く終りにしなければなりません。
もちろん、24才でも30才でも常日頃汗みどろの精進を重ねている者ならば、勝つのも当り前だし勝つことも大歓迎です。
そうでない時代が少し長すぎていた感じのあった折から、日中対抗の将来に期待するものも大きいと思います。
1971年3月
荻村伊智朗
※卓球王国が運営する「王国e Book」では卓球ジャーナルの電子書籍を購入することができます。
王国e Bookはこちら。