IOC総会 1998年長野冬季五輪報告書 1991年6月 荻村伊智朗

バルセロナIOC総会 98年冬季五輪報告

1991,06,17

JOC国際委員長 荻村伊智朗

ソルトレイクに比べれば施設がほとんど出来上がってないし、新幹線や空港ができても遠く、テレビマネーの収入も少ない長野がなぜ勝った。エステルスンドに比べればビッド数が少なく、国としても開催回数の多い日本の長野がなぜ勝ったのか。

結論:薄氷を踏む勝利

理由

  • イ 4票差= 2名差。
  • ロ 昨年の票読みの方が多かった。
  • ハ バーデンバーデンから十年、数々の国際大会を積み上げてきたJOCの自己評価から言えば、もっと票があっても良いはず、と言う観方もできる。
  • 感想 JOCとしては、今回のようなビッドを繰り返さないように研究する必要がある

勝因1:三つの幸運な状況のため

幸運な状況の分析

  • 幸運1. 地理的配分の原則 アトランタ、リレハンメルの直後と言う投票時期的、地理的な幸運
  • 幸運2. 前回開催からの期間 日本で四半世紀ぶりの開催
  • 幸運3. 信用
  • 後述する3つの信用
  • 信用1 : 日本に対する信用(新幹線、高速道路、空港整備、など、政府の決定。競技施設等への政府の財政援助等への期待。同じ信用が、名古屋に対しては与えられなかった。)
  • 信用2 : JOC ・体協など日本スポーツ界への信用。古橋、猪谷、岡野などとIOC委員たちとの良好な関係。
  • 信用3 : 長野県民の真面目さの信用。知事、市長への個人的信頼の積み重ね。市民、県民の熱意の伝達。
  • 国際的な信用を築き上げるには少なくとも十年はかかる。ビッドに与えられた信用の大きさは、1から順に大きかったと考えるのが素直な見方であろう。

理由2:戦略は合格

1. IOCに現地視察してもらう努力。目標を70名と置き、ほぼ達成。昨年9月中旬に、この方針を確立。急激な追い込みで何とか達成。もっと早く方針を決めていればもっと承知できた。

2. 長野でやることがスポーツを盛んにする。‐-とりわけアジアのスポーツを盛んにする‐‐開発や経済効果よりスポーツの振興に絞った訴求と約束。

強い訴求点になった。

3. 相手をソルトレークに絞ったプレゼンテーション戦術の作成と実施。

現地に入ってからも、エステルスンド有力説があったくらいだが、プレゼンテーションの映像、印刷物、スピーチなどは、相手をソルトレイクに絞り込んだ。特に映像は昨年からスタートせねばならず、初めからソルトレイク対抗に絞った。電通が忠実にフォローし、人間業とは思えない驚異的な粘りで土壇場まで修正にすぐ修正をこなし、我々の要求を実現した。

伊藤みどり、橋本聖子、小谷美可子など、現役選手たちの意見を活かして、施設を造り、大会の組織運営することを訴えた。伊藤、古谷らが健闘し、加点した。

施設がないことのメリットを強調し、「最新のものはベストのもの」と言う強気の考えを貫いた。

選手村の70%は個室であることを強調し、ソルトレークの唯一の弱点(大学キャンパスが選手村)と対比した。

コンピュータグラフィック、映像部門では他の都市をかなり上回った。

4. 責任者が、責任のある事柄について明確な態度を取る原則

言葉の問題があり、原則を徹底することが難しく、苦戦の原因になったプレゼンテーションでは、相当挽回した。

5. 圧倒的多数の県民・市民が、招致を熱望している事実を伝える戦術

子供たちの手紙や絵の送付、市民やJOC、IOC委員による訪問などには相当の効果があった。ただし、他の候補地も行っており、訪問と招請ではソルトレークが今年に入ってから長野を上回ったものと思われる。英語を話す市民、市民一人一人の経済力、客をもてなせる家庭の大きさ、などを考えると、長野の(というより、日本の)劣勢は否定はできない。終盤の猛烈なチャージを許したものと考えられる。

IOC会長などは人海戦術的熱意表明を個人的には嫌ったが、反対する人物を物理的に排除することができない以上、賛成する人たちが大勢で自分たちをアッピールしたいのは人情だろう。積極的ポイントよりも、マイナス点の相殺効果があったといえよう。

6. 長野に対してよりも、日本に対して世界の人々が今持っているイメージに応えるプレゼンテーション戦術の実施。

ハイテクイメージでNHK、松下電機の緊急協力を頂き、土壇場で加点した。ここに謝意を表す。

ティーセレモニー、鈴木メソッドや小沢、首相のメッセージや政官界の現地激励など、他の都市に拮抗する効果があったと考えられる。

国際化への努力を、全員の外国語でのスピーチで訴えた。

長野五輪承招致報告書1

長野五輪招致報告書2

長野五輪招致報告書3

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