祝 第2回アジア卓球選手権大会
1.日本で行なわれるアジア大会としては史上最大
現在、国際卓球連盟(ITTF)には108の協会が加盟している。これは陸上、サッカーに次いで大きな競技連盟である。アジア卓球連合(ATTU)には27の協会が加盟している。
そして今大会には、30を越えるチームが参加をした。これはアジア卓球連合にとっても、まだ、加盟はしていないが熱心に参加する友人を持ったことを意味する。また、日本の組織委員会としては、日本で行なわれた歴史上のどんなスポーツ大会よりも、参加チームの多い大会であるという光栄によくしたことができたわけだ。
もちろん、アジアの地区には参加できなかった国や地域もあるけれども、現在の国際情勢からいって、求められる最大限の参加チームを得ることができたといえよう。現在の日本をとりまく国際情勢やアジアの情勢が理想的なものではない以上、私たちはひとまずこの段階での成功を祝わなければならない。
特に、71年の名古屋における世界選手権大会がピンポン外交として、日中の国交回復や中国とアメリカの友好親善に大いに役だったこの大会でも、日本との国交がまだない国や地域の選手が大勢参加して、国民間の友好交流のきっかけをつくったことは、高く評価してよいことだと思う。
こうした条件はいまのところ、卓球にだけ与えられたすばらしい条件である。日本の卓球関係者は今後も努力をして、こうした卓球に与えられたすばらしい条件を活用して、競技の発展普及に各国民族問の友好親善のために努力していかねばならない。
ミュンヘンオリンピックのときだったか何かの世界選手権大会のときだかに、日本のホッケー協会のエントリーが遅れたために日本チームが出場できなかったことがあった。また、日本のある協会が他の国のエントリーを忘れたために、その国が参加できなかったという事件もあった。エントリー〆切り日というのは、何のためにもうけられるかというと、人を除外するためではない。大会組織をする人たちが仕事をする一つの目安として、この頃までに申し込んでもらえば仕事がしやすい、という意味で設定されたものである。
ところが、上記の例に見られるように、スポーツの大会組織は形式的になりすぎている面がある。そのために、一日おくれたという理由でせっかく集まれるはずの仲間を除外するというような結果がでている。そして、大勢の人がそのためにかなしんでいる。
第2回アジア選手権の場合はどうだろうか。もちろん、組織委員会は2月の末日をエントリー〆切り日として設定した。しかし、それぞれの国にはそれぞれの事情がある。やっとチームを組織でき、旅費をくめんできたときには、〆切り日が過ぎていたというチームだってある。
そういうチームが少しおくれて申し込んだ場合でも、組織委員会はもちろんこれを受け入れて、大会の日程を編成した。形式上、こうした組織委員会の決定は、ATTUの会議にはかられるが、集まった全員が、この組織委員会の行動を支持してくれるものと思っている。
2.友好第一を行動で示している
友好第1、と口でいうことはやさしいけれども、実際行動でもって示すとなるとなかなか大変なものである。
日本の卓球協会は、選手権大会と友好交流というこの大会の性格を忠実に守って、代表選手団と友好交流代表団を組織した。そして、古川選手、浜田選手といった国際的にも有名な選手たちが、各国の新人やべテランと一緒に練習をし、技術交流をして大会を側面から盛りあげている。こうした選手たちの心よい努力も、友好第1の精神を行動で示したものである。
3.ヨーロッパとアジアが並び立っている
明治のころ、日本を代表するスポーツ人であった嘉納治五郎氏ほか数名の人たちが、外国へ出かけていって、スポーツを輸入し、スポーツ精神を輸入した。そして、それが日本の風土に根づいて、いろいろなルールや制度となってすわってきている。ちょうど日本人が他の文化面で外来の文化を受け入れて、日本流に消化をして発展させたのと同じような経過をたどっている。
卓球においてもそうである。
特に卓球の技術は、日本において特に発達し、世界のレベルを大いに前進させたということができる。しかし、一つだけなかなかあらたまっていないものがある。それは国際スポーツ界におけるヨーロッパ史上主義、ヨーロッパ白人優先主義とでもいったような考えかたである。
国連には145ほどの国があり、それぞれ立派なスポーツ活動を行なっているが、いまだに世界のスポーツ組織は“一部のスポーツ先進国”によって動かされている。
アジアやアフリカ、ラテンアメリカなどでスポーツが新しくおこり、大勢の人たちが競技に参加しているが、国際競技連盟の運営にあたっては、この人たちの声が必ずしも正確に反映されているとはいえないのが現状である。
卓球ではどうだろうか。この大会に国際卓球連盟の会長ロイ・エバンス氏、名誉専務理事AK・ビント氏などの人たちが来賓として参加して、大会を盛りあげていることは、卓球においてはアジアとヨーロッパとが、手をとりあって並び立って発展していこうというありさまをよく示している。
1974年3月
荻村伊智朗
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