『機能的な体操』1970年9月 卓球ジャーナル「発行人から」より

機能的な体操

16年前の世界選手権で、練習や試合の前後に柔軟体操をやり、ダッシュをやり、素振りをやったのは日本チームだけでした。ヨーロッパでは、すぐれた個人、例えばシドとか、アンドレアディスとか、パーグマンとかがウォーミングアップや試合後のマッサージ、食餌などに意をはらい、質の高い選手生活に努めていましたが、一般的なものではありませんでした。

一般的なものでないといえば、日本でも、上記のことは選手生活に必要不可欠のもの、とは考えられていず、どちらかといえば、個人的な習慣としか受けとられていませんでした。

ところが今日では、中・高・大・社、どのチームをとってみても、日本的な大会に参加するほどのチームでは当り前のことになってきました。日本においては、選手生活の一般的水準が高い、といえるでしよう。

ヨーロッパではこんな話があります。

7-8年前に英国での試合に参加した若手のスウェーデンチームが、日本流のウォーミングアップをやっていたところ、英国の代表選手達が腹をおさえて笑い、“君達は体操の選手になるのかね、それとも卓球の選手になりたいのかい”ときいたそうです。

ところが、1967年の世界選手権大会の会場では、その英国の選手達が猛烈な体操を含むウォーミングアップをしていました。もちろん、その大部分は、スウェーデンチームの体操を笑った人達です。

体操といえば、日本の柔軟体操に深い影響を及ぼしたのが、デムマークのニールス・ブック氏の体操です。いわゆるデムマーク体操ともよばれるブック式体操は、日本のラジオ体操や戦前戦中派ならご存知の海軍体操などの原型で、広く日本人の生活の中に根をおろしています。

このデムマークで、先ごろ、北欧3ヶ国のナショナルコーチを集めての研修合宿が、北欧卓球連盟とデムマーク卓球協会の主催で行なわれました。

私も数日間顔をだして見学し、討論に加わりましたが、会場を提供した国立スポーツ学校の教師達とも交流し意見を交換しました。

この学校はデムマークにある4つのスポーツ学校のーつで生徒は90名、ークラス30名、9月開講5月卒業の全寮制です。先生は7人。他の3つの学校と違うところは、社会体育の指導者(アマチュア)希望者を各地から集めて教育することだそうです。

このスポーツ学校のA先生(写真右側)が、先だって日本の職場体操と中国の学校での体操がテレビジョンで紹介されたのを見た時の印象を次のように話してくれました。

A氏“僕はそれらの体操をみてびっくりした。まったくプック式体操にそっくりなんだ。”

荻村“日本ではよく普及しているし、卓球の体操にも参考にされている。だが、私達はいま、卓球の動作から採り、卓球の動作を補助し、強化できるような体操の開発が急務だと考えている。”

A氏“その通りだ。我々はニールスブックにはメリットもあるが、人間の体の機能的な面を軽視したデメリットもあると考えている。”

荻村“ブック式のデメリットは、あまりにも機械的ということだろうが、基礎造りの段階では果し得る役割りも多いと思う。だが第ニ段階という応用段階では、専門的動きをとり入れた卓球体操ということになろう。”

A氏“是非、本校の開講中にまたきて欲しい、我々の試みも見せたいし、君の方の研究の手助けもできるよ”

専用体操を開発してみませんか!

この十年ぐらいのうちに、卓球協会の合宿等で行なわれている体操は日本全国の卓球部に普及しました。熱心な部ではシャドウプレイなども自分のものにしています。

これは、日本の卓球界の底力を示すすばらしいことです。ここで更に一歩すすんで、卓球専用体操を開発してみませんか?

部長や顧問の体育の先生の助力を得れば、専門的な見地からも価値の高いものが考案される余地が充分あると考えます。

すぐれたものは本誌でもどしどし紹介したいと存じます。研究や発表について興味をお持ちの方は積極的に意見をお寄せ下さい。

1970.9

1970.9.機能的な卓球体操

 

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