クールな中学生
今年の全国中学生大会(8月8~19日、於中野区体育館)の特徴は、
1.全般的な水準の向上があったこと
2.試合態度が(ベンチを含めて)一流選手に近い冷静さとゆとりがあった
3.名門校台頭の兆もあったこと
などであろう。
1の全般的な水準向上は、この大会が中学校の指導者や中学生自身の心の中に年中行事として、また、目標として、定着してきたことを物語っている。
これは日本の卓球を向上させるために良い傾向だ。その反面、私たちは、指導者の方々に、“この大会がこの選手唯一最高の目標ではない”という意識をしっかりもっていただきたいものだ、と思う。
一、二回戦でみた大柄な選手達は回が進むにつれてほとんど姿を消し、中肉中背か、少し小さめのヒ弱い感じの人たちが残っていったのが印象的だった。別に大柄の選手が残らなければならない、ということではない。私自身も中学生時代は人の目をひくほどよい体格をしていたわけではない。だが、小柄な選手が大きくなったり、ヒ弱な感じの選手が隆々たる筋骨の体格になっていくのはたいへんなことだ。そういう意味でも、敗れた選手達や指導者は“まだ大きな目標がたくさんある”と思ってもらいたいし、良い成績をあげた人達にしても“さあこれからだ”と心を新にしていただきたいものだ。
2のクールな試合態度については一驚に価する。男子の部で優勝の睦沢中の矢部先生の文章に「強気でいけ、と他の人が言うような場面があれば、私だったら、弱気でいけと目語りするだろう」というのがあったが、力まず、背のびせず、淡々とした試合運びは好感がもてた。睦沢中だけでなく、上位入賞の男子チームはとても冷静で、人を傷つけるような大声もあげず、それでいて要所での闘志や思い切りのよいプレイにあふれ、とても感じのよい試合ぶりであった。高校と大学を一気にとびこして、社会人選手の一流どころに迫るようなみごとな試合ぶりであった。
3の名門校台頭の兆は早くも現われていたが、地元や指導者の熱心さが即名門、という感じで、ほほえましい思いが多かった。言いかえれば、全国どこの中学校卓球部でも、明日から名門校になれる、ということであろう。全国の中学生諸君、がんばろう。
1972年8月
荻村伊智朗
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