中国チームの訪米決定を歓迎する
「卓球をやって何になるんだい」という親もいる。私達の住む日本では、この“何に”というのは“金に”ということと理解されることが多い。
“エコノミックアニマル”というあだ名が日本人に冠される10年も20年も前からそうであった。
さて、中国チームが、個人主義と利己主義とでは日本の社会の先生のようなアメリカへ行く。「闘私批修」(私心と闘い修正主義を批判する)をスローガンとする中国チームの作風とが、「それで、君はいくら稼ぐ?」とすぐ聞くアメリカの人達の間にどのような反響を巻きおこすか?
“何に”を“金”にではなく、文化的な仕事にと置き換えた場合、大いにためになることを中国の卓球選手はやるはずである。
訪米中国チーム選手の母親達が息子や娘を大いに誇りに思うことは想像にかたくないが彼ら代表チームを支える底辺の無名の幾百万の選手達の母親も、自分達の息子や娘を大いに誇りに思っていることだろう。
学生リーグに新風を期待する
学生リーグ、なかんずく関東学生リーグは1950年代から日本卓球の中心であった。しかし、いまや、そうではない。日本の他の地区が伸びた。名古屋や九州や仙台に強いチームがでた。それと共に関東のレベルが下り、まだ下っている。選手のスポーツマンとしての意識も低い、といわれているが選手だけのせいにしてもしかたがない。マンネリをやぶる努力が必要だ。
関東学生リーグの生き生きとした時代を振り返ってみよう。活気に満ちた中心的人物を持った新興チームの躍進が第一の特徴だった。四部から一気に上ってきて古豪を押しのけ、やがて優勝したチームに専大、中大、日大などがある。
また、そうした躍進を可能ならしめる要素がリーグにあった。
いま、50年代の何倍もの登録チームを持つリーグは昔よりも水がよどんでいないか。流れが悪くないか。私はもっと流れを良くする必要があると思う。リーグ主催者の仕事はいろいろあるが、加盟チームやその選手達の間の交流を活発にすることは主要な仕事だと思う。
一つの方法としては、リーグを各一部8チーム制にすることも良い。流れが30%も活発になり、「よし、俺達が頑張って」と若さで頑張る下位チームが増えよう。それはとりもなおさず、上位チームの刺激になろう。
第二の方法は、関西、東海、九州、東北などの精鋭と、フランチャイズ方式の日本学生リーグを発足させることである。これが、社会人優位の現状を打破するきっかけになる可能性は大いにある。
いずれも今年中の実現には幾多の困難もあり、有意義な反論もあろう。私は、とにかく、政策担当者の任務は組織を活発に動かすこしと主張したい。
1972年2月
荻村伊智朗
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