中国男子の強さは本格復活か
上海オープン団体戦でみせた中国男子若手の強さは圧倒的なものだあった。日本の高島、内田、前原らは、いまどんな大会をやってもコンスタントに上位へ進出する実力者だが、12~15本の平均でやられている。日本だけでなくベンクソン、トーセルこそいなかったが、スウェーデンやフランス(これはベストメンバー)も5対0で平均12、13本でやられている。中国の主力は、16~19歳のティーンエージャーに移った感もあり、対日本戦ではA、B2チームとも5対0、わずかにベテランの李振恃が1ゲームを落としたのみだった。
この中国十代選手の強さは、1965年~66年位の中国若手の伸び盛りの強さに比肩すべきものを感じる。日本チャンピオン長谷川をはじめとし中国遠征の日本チームはやはり12、13点でたたきふせられた苦い記憶がある。
1966年中国をおそった文革の嵐に巻き込まれた中国スポーツマン達は、深刻な状況に投げこまれ、とても練習どころではなく、1972年復帰した時も、立った姿にも、中年の感の否めないベテランに頼らざるを得なかった。ジュニアの水準も低く、そのころの日本にはよく負けた。しかし、数年たつと郭躍華、黄亮などが日本の同年代を追い抜いて気を吐くようになった。
こんど主力になった十代選手は、さらに背景が違う。文革後の混乱をある程度収拾したころから卓球を本格的にはじめ、練習量も豊富で、コーチもしっかりしている、といった感じになってきている。中国の男子の強さは、本格復活か、と思わせるほどであった。
富士山やエベレストに登り口がいくつもあるように、卓球において、コントロールから入ってスピードやパワーをつけ加えて強さをきわめていく道と、スピードとテンポから入ってコントロールやパワーをつけ加えて強さの絶頂をきわめていく道と、あるいは二つあるのではないかと思わせるような蔡振華、謝賽克、施之皓などのあざやかな速攻であった。
1980年6月
荻村伊智朗
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