80年秋のビッグイベント
3A大会が近づいた。9月2日から7日迄、千駄ヶ谷の東京体育館で行われる。私にとっては、世界選手権大会で3種目に優勝した想い出の深い体育館だ。
大会の前には25日から各国のチームが到着、友好交流が川崎製鉄、シチズン時計その他でおこなわれる。そして、28日からは日本や中国が中心になってコーチ研修会や国際審判員講習会がおこなわれる。
コーチ研修会は世界選手権で活躍した日中のベテラン選手がテーマを決めて、項目別グループ別に選手を指導しながら、コーチもいっしょに指導しようというユニークな試みだ。
日本中の公認コーチ、上級公認コーチは千名以上いるが、卓球協会はその中の有志の参加をつのっている。
また同時におこわれる国際審判員講習会は、83年の世界選手権に備えて、公認国際審判員の受験者を養成する大切な講習会だ。現在日本には国際公認審判員資格者はまだ3名だが、世界選手権を運営するには、少なくとも60名の有資格者が必要だ、といわれている。日本の人は優秀な審判技術をもっているので、4日間の講習で十分な応用知識を獲得すると思う。
中国チームの中で注目したいのは若い謝賽克の打球点だ。「昔の中国ならジュニアのうちに候補から外すか、調整するかしただろう……」とはある中国人OBの率直な感想だったくらいで、クローズドフェイスでボールの頭を押して打ちこんでゆく強打は独特の境地である。中国の前陣攻守スタイルも、他の用具の変化に応じて変化していくものだ、ということを学ぶことができよう。
一方、先日の欧州選手権で西独やハンガリーを破って優勝したスウェーデンチームから試合の申し込みがあり、学連を中心に対戦が考慮されている。
8月下旬には、小野、高島、ベンクソンらが出場するワールドカップが香港であるし、3A大会につづいては、青森、秋田、松戸、宇部の4カ所で恒例の日中交換卓球大会が開かれる。そして国内大会が一段と激しさを増し、12月の日本選手権が終わればいよいよノビサドだ。その次は日本での世界選手権だ。88年からオリンピックが続く限り、卓球が正式種目となる日も続いている。IOCのプログラム委員会を通り、執行委員会、理事会を通った、もう一息だ。
若い諸君にとって、今ほどチャンスに恵まれた卓球の季節は史上かつてない。大いにアンビシャスになり、力強く、精一杯はばたいてほしい。
1980年9月
荻村伊智朗
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